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翔くんがいた幸せな頃を夢見て、泣きながら眠りにつく。
『夏乃は怖いもの本当に苦手なんだな。指の隙間から見るくらいなら、ホラーなんて見るなよ』
あははとニヤッと笑う翔くんが、ゆっくりと立ち上がり私の後ろに座ってくれた。後ろから翔くんの両腕が伸びてきて、私を後ろへと押していく。耳元で聞こえてくる翔くんの心臓の音。
『翔くんだって心拍数はやいよ』
見上げて彼を見るとマニッシュヘアー髪から少し見える目が弧を描いて笑っていた。
『夏乃にバレたか。じゃあ、止めてこれにする?』
私がホラー苦手なことを知っていて彼は私の反応を楽しんでいる。その姿を見ても嫌だって感じなくて、温もりがそばに来るならこのままホラーでもよかった。
『蘇ったらさ、別れがツラいだけなのに・・・』
愛しい人が生前の姿で再会を果たす現代ファンタジーものの映画。
『だな。俺だったら無理かも離したくない』
両手に力がこもりギュッと抱きしめてくれる翔くん。
『まぁ、ファンタジーだから生前の姿のままってのは無理だけどさ、あるじゃん?流行った歌で、なにかになって会いに来てよ』
そんな冗談を話し合って笑いあっていた日々。もしその時が来たら合図をしようと決めた。
*
チュンチュンと鳥の囀りで目が覚めた私。翔くんは歌の通りに鳥になったのかな?
「泣き寝入りなんて子供の頃以来だな・・・」
冷感シートには涙の染みができていて、私は目蓋を拭いながら起き上がろうとして異変に気づく。
人の姿がないのに、隣に寝ている影がいたからだ。
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