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「告白」のその後の話〜廉〜
時々、夜に寝ていると思う。すぐ隣に「彼女」がいないことが寂しい。
思い切り甘やかしてあげるから、一晩、一緒のベッドで眠りたい。
(つくづく駄目な「元生徒会長」だよな)
夜中三時半の、三日月とは逆方向を向いた「二十六夜月」が出ている晩のことだった。
結衣(ゆい)は今頃、眠っているに違いない。
代わりに自分が「眠れない」。
冷房の効いた部屋の中、夜が明けるのを廉(れん)はひたすら待っていた。
絵描き志望の彼女ができた、とクラスの奴らに言うと、「えぇえー。真面目がとりえのお前が、なんでまた!」という反応と、「羨ましい! ニクイ男だな」という反応、両極端だった。奏(かなで)のように「そっか。良かったな」とあっさり言う奴は例外だった。
クラスの大半の反応というのは、どちらにせよ、絵描きというのは特別な人種なのだと決めつけた「ものの見方」からくるものだ。
自分だってそうだった。
桜澤結衣の芸術性に、ものすごい神秘や謎を求めてた部分はあった。
でも、ごく普通の女の子だった。
廉は何よりそのことに驚いたし、また安心した。
夜中の三時にラインが来ることなんか一度だってなかった。絵を描くのもおばあちゃんにしばらく禁止されていると言い、中間テストの結果が振るわなかったから、期末テストを頑張ると自分で気合を入れていた。
幸い、勉強方面のアドバイスは廉の一番得意とするところ。
七月は、二人で図書館やカラオケルームなどに行き、一緒に勉強ばかりしていた。カラオケルームをせっかく借りてるので、二人で一曲ずつ歌ったりはしたのだが。
わかったのは、二人とも歌があまり得意ではないことだった。
それでも、勉強の合間に一曲歌うのは「すごく気持ちの良い」ことだった。
だが。期末テストがようやく終わると、途端に二人の共通の話題がなくなった。
可愛いものを見にいく、とか、可愛いカフェに行く、とかでは何か物足りないのだ。
カラオケルームに行っても一曲ずつしか歌わないんじゃなあ。廉は運動音痴で、ボウリングもできない。
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