9人が本棚に入れています
本棚に追加
御子柴藍は死神である。
誰かがそんなことを言い出した。何故か昔から不幸体質で、近づく者皆に不運が訪れる。ある者は大怪我を負い、ある者は詐欺に遭い、ある者は命を落とした。
偶然だと言う人もいるが、大抵の人は僕が原因だと詰る。悲劇の舞台にはいつも僕がいた。
僕は生きているだけで周りを不幸にする。
どうして僕みたいなのが生きているんだろう。
早くひとりぼっちになりたい。
ゆっくりと意識が浮上し始めると、小さな会話が聞こえてきた。
「玲桜様が来てくださって助かりました」
「この地の祓い屋は何をしているんだ。吐いて捨てるほど悪霊がいるのに、何故対処しない」
保健室の伊豆 吉野(いず よしの)先生の声がする。玲桜様って呼んでるということは、知り合いなのだろうか。
それにしても、神谷くんは僕と話す時と違って、なんて冷たい声を出すのか。本来の彼はもっと冷酷な人なのかもしれない。
「……玲桜様には砂糖菓子のように容易く斬れてしまう悪霊に見えるかもしれませんが、並みの祓い屋では返り討ちに遭うだけなのです」
「記録には応援要請に応じて本部から手練れの祓い屋も派遣されたとあるが……この様子だと」
「ええ、病院送りです」
「はぁ……わかった。もう良い。俺がやる」
「ですが、彼の警護はっ」
「それも俺がやる。手出しするな」
「ハッ」
頬にもふもふとした感触がして目を開けると、愛らしい顔をした桜久がいた。僕の頬をぺろぺろ舐めてくる。
「はは、くすぐったいよ、桜久」
僕と桜久の戯れに気づいたのか、ベッドを囲んでいたカーテンが控えめに開けられた。
最初のコメントを投稿しよう!