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「あいちゃん、体調はどう?」
「だから、名前で呼ぶのはやめてくださいって言ってるでしょ」
「元気そうだね」
神谷くんはへらっと笑い、ベッドサイドの椅子に腰掛けた。長い脚をあまらせ気味に座るところが憎い。
周りを見渡すと、やはりここは保健室のようだ。桜久のもふもふの毛を撫でる。
「神谷くんが僕を運んでくれたんですか」
「まあね」
「運んでくださってありがとうございます」
「いや、あいちゃんの体調不良はただの風邪じゃないからね」
「また、悪霊、ですか」
「そう。一旦君が眠っているあいだに、纏わりついてた悪霊は斬ったけど、また集まってくるだろう。だから、あの衣を着て欲しかったんだけどなぁ」
「あれ、目立つじゃないですか」
「でも、効果は抜群だよ? 思春期真っ只中のあいちゃんには難しいかぁ」
「いくら効果があったって、変人扱いされるのはいやですよっ」
煽るような言い方に、ムッとむくれる。すると、彼は愛しい我が子を見守るように目を細めた。いきなり甘い視線を向けられてドキッとする。
「まあ、四六時中桜久をそばに置いていれば大丈夫だよ」
「それって、これからは高校生にもなって四六時中ぬいぐるみを連れてるイタイ男になれってことですか」
「そういうこと」
「いやすぎるっ!」
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