はじめまして御子柴くん!

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はじめまして御子柴くん!

 気が付いたら山頂に辿り着いていた。墨で塗りつぶしたかのような異様なまでにどす黒い空。崖下を見下ろしても真っ暗で何も見えない。雨の匂いもしないのに、月は全く現れてくれなかった。 「父さん、母さん……」 身体は何かにのしかかられているかのように、ずっしりと重たい。何故こんなところにいるのか。どうやってここまで来たのか。全く覚えていなかった。 ただ、ここから飛び降りたらどんなに素敵だろうかと思いを馳せる。軽やかな背中を押すように、びゅうびゅうと強い風が吹き荒れた。 何も恐れることなどない。 泥だらけの靴が進もうとしたその時ーー。 「ああっ、やっと会えた!」 まるで、彼が登場するのを待っていたかのように月が顔を出す。 金色に輝く髪に、海を思わせるサファイアの瞳。異国を思わせる容貌とは異なり、学生服に桜舞い散る着物の羽織を引っかけ、腰には刀を差していた。 月を背中に、空から舞い降りて来る青年。まるで、ハリウッドスターのような登場に度肝を抜かれる。
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