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これは本当に現実なのだろうか。
神谷くんは白虎から飛び降りると、黒い物体に向かって刀を振り下ろした。先ほどとは比べ物にならないほどの断末魔に、僕は思わず耳を塞ぐ。
「なんだ、これっ」
しかし、視界が開けたのは一瞬だった。悪霊が渦となり、あっという間に神谷くんの全身を包む。
「神谷くんっ!」
呑まれてしまうかと思いきや、中から光の筋が四方八方に伸び、一気にもやが霧散した。お見事!
主人の奮闘を見たからか。白虎の桜久もひと声鳴くと、大きな口を開け、何かのビームを出した。広範囲の悪霊たちが塵となる。
「え? なにあれ、アニメ?」
人生で初めてビーム見た!! かっこいい!
それはさながら、テレビの前で戦隊モノのヒーローを応援するような興奮っぷり。僕は知らないうちに、拳にぐっと力を入れていた。
祓い屋陣営の猛攻撃はまだ続く。
神谷くんは白虎の背に乗ると、大量の桜色の札を悪霊たちに浴びせた。先ほど、悪霊の動きを止めた札とは、また異なるものだろう。
「爆ぜろ」
冷酷な声と共に、神谷くんが指をパチンっと鳴らす。合図がかかると、札がごうごうと音をあげ、燃え上がるではないか!
炎は瞬く間に悪霊たちの群れを襲い呑み込んでいく。逃げ出そうとする黒い物体は、容赦なく神谷くんが斬り、桜久が潰していった。
ひとりの祓い屋と彼の獣が、おぞましいほどその場を支配していた悪霊たちを掃討したのだ。
僕はまさしく、ヒーローを見ているようだった。
もしかしたら、僕の悪縁も切ってくれるかもしれない。そう、期待した。
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