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神谷くんが白虎に乗り、再び僕の目の前に飛び降りて来た。見事な着地をし、前髪をかきあげる。それだけでも絵になる男だ。
「あいちゃん、怪我はない?」
「え、あ、はい。問題ありません」
「良かった。じゃあ、もう今日は遅いし、お家におかえり。念の為、今夜はその羽織を手離してはいけないよ? いいね?」
「わ、わかりました」
「うん、いい子」
それほど年は変わらないだろうに、妙な色気がある。彼は無造作に僕の頭を撫でてきた。恥ずかしいからやめて欲しいのに、うまく声が出ない。
「あ、あの」
「それじゃあね、おやすみ」
「おやすみなさい」
神谷くんは僕の頬に軽くキスをすると、白虎に跨り、夜の空を駆けた。
彼は『おやすみ』と言ったのに、全く休む気がないらしい。仕事が多いのかもしれない。
「どさくさに紛れてキスしやがった……」
作りものめいた笑顔を貼り付けるイケメン。
それが僕の神谷玲桜への第一印象だった。
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