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「藍、ほら、ちゃっちゃと食べちゃって」
「あ、うん」
「んもう、ホントにぼーっとしてるんだから」
母さんから小言を貰いながら朝食を胃に流し込む。さっさと支度を済ませて家を出た。自転車をいつもより早く漕いだら、なんとか間に合った。しかし、何故か異様に疲れる。いつもは通学だけでここまで汗が流れることはないのに。
昇降口にある時計を見れば、思ったより時間が迫っていた。ため息を吐きながら必死に階段を上がる。2階の奥が、1年7組の教室だ。
「おはよ、御子柴」
「はぁっはぁっ、お、はよ」
席に着くと、すかさず隣の席の木村 雅貴(きむら まさちか)が話しかけてきた。ふわりとゆるく巻かれた茶髪は、地毛で天パなのだそうだ。物腰柔らかで男女平等に優しい。俺があまりクラスに馴染めていないせいか、何かと気にかけてくれる良いやつだ。
良いやつだからこそ、余計に遠ざけたくなる。
「御子柴、具合悪いのか? 今朝もいつもより12分到着が遅いし」
「別に、たいしたことない。ふぅ」
それ以上の質問は受け付けない。という意志を態度で示す。木村はこちらを心配そうに眺めてくるが、徹底的に無視した。
「ホームルーム始めるぞ〜、席つけ〜」
担任の下山先生(しもやま)が入ってきて、ガヤガヤと生徒たちも席に着いた。
僕はまだ、汗が引かないので、メガネを外し、持ってきていたタオルでガシガシと顔を拭く。
「今日は転校生を紹介する。入れ〜」
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