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入って来た転校生に皆んながざわざわと騒ぎ出す。
梅雨があけようか、というこの時期に転校生なんて珍しい。下山先生がチョークを動かす音が響いた。
「では、自己紹介よろしくね」
「はいっ。みなさん、はじめまして! 神谷 玲桜です! 今日からよろしくお願いします!」
は? なんだって?
僕は眼鏡をかけて、バッと前を向いた。なんとそこには、昨日なんやかんやを共にした相手、神谷玲桜がいるではないか!
しかも、いつもの笑顔がちょっと引き攣っている。
「神谷の席は、御子柴の前の席だな」
「はい!」
「ゲッ」
元気よく返事をする神谷くんとは違い、僕は深くため息を吐いた。嫌な予感しかしない。
神谷くんは長い脚を動かし、僕の前の席に座る。
「あいちゃん、俺のあげた魔除けの衣は?」
心なしか苛立ったような声音にドキリとする。笑ってるのに目が笑ってない。というか、同い年だったのか!
「家に置いて来ましたけど」
神谷くんは大袈裟に天を仰ぐと、胸ポケットから人型の紙を取り出した。
まさか、こんな教室のど真ん中で、昨日のどでかい白虎を出す気だろうか?!
「桜久、あいちゃんの警護してあげて?」
彼が軽く口付けると、ぽんっとぬいぐるみサイズの桜久が姿を現した。昨夜大暴れしていた猛者とは思えないほどの、愛らしい姿にキュンとくる。
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