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もしかして、この方はあれなのだろうか。所謂厨二病を患ってらっしゃる方なんだろうか。
神谷玲桜と名乗る男は、勢いよく地面を蹴ると、全速力で走り出した。
はやいっ!
「っらぁ!!」
掛け声と共に腰にさしてある刀を振るう。彼が横に刀を払えば、黒いもやは真っ二つに割れて霧散した。
「なんだ、これっ」
華麗な足捌きで険しい山道を駆け抜け、確実に敵を屠っていく。まるで、舞台上で舞うバレリーナのように美しく気高い。彼が刀を振るう度、断末魔のような声が聞こえ、黒い姿が消えていった。その優美な戦いっぷりに釘付けになる。
「えっ」
今、視界の端で何かが蠢いたような……。
嫌な予感がする。見てはいけない。見たら終わる。わかってはいたが、違和感には逆らえなかった。
思い切って、足元を見下ろすと、黒いもやが僕の脚にしがみついているではないか! 一気に血の気が引く。
「ひぃっ!! こっち来るなぁ!」
「あらあら、本当にモテるねぇ、君」
神谷玲桜は急ブレーキをかけると、こちらに猛スピードで駆けてきてくれた。しかし、それよりも早く黒いもやが僕に襲いかかってくる。
「や、やめろ!」
「俺のものに手を出すな。ケダモノめッ!」
彼が懐から取り出したお札が、ぺたぺたっと黒いもやに貼り付く。そうすると、もやは身動きが取れないのか、寸前のところで止まった。すかさず、神谷玲桜が黒いもやの脳天(らしきもの)を上から刀で串刺しにした。
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