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結局、ついて来ちゃった。
彼と共に山を降りて、街中を歩いて行く。随分とひとりで遠くまで来ていたものだ。きっと悪霊とやらに、身体を乗っ取られていたのだろう。にわかには信じられないが、そうとしか思えない。
すると、神谷玲桜がおもむろに自分が着ていた着物の羽織を、僕の肩に引っ掛けてきた。体格差のせいか、所々布が余り気味なのが解せぬ。
「え、暑いんですけど」
「これ色々まじないがされてる特別な羽織なんだ。君を悪霊から守ってくれるよ」
「はあ、ありがとうございます」
ふわりと香る桜の涼やかな匂い。香が焚き染めてあるのだろう。心穏やかになれる香りだ。
「そう言えば、まだ名前聞いてなかったね? 俺は神谷玲桜。れおくんって呼んでくれて良いよ?」
「……御子柴(みこしば)です」
「御子柴……なに君?」
「藍(あい)……です」
「あいちゃんかぁ!」
「ぐっ、やめてくださいっ! 下の名前で呼ばれるの嫌いなんですよ!」
「なんで? 俺は下の名前で呼んで欲しいな?」
「あんたの話は聞いてません! とにかく、名字で呼んでくださいっ!」
「うーん、みっちゃん?」
「は?」
「やっぱり、あいちゃんが良いよ。だって、キレイな名前だもん」
「はぁ、そういうのは女子を口説く時に言うんですよ。男に言っても仕方ないでしょ」
「え〜? 本当にキレイだと思ったから、言っただけだよ」
調子狂うなぁぁあ。
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