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僕は昔から女の子に間違えられてしまうほど、華奢な体形をしている。毎日牛乳を飲んだり、キッズ用のトランポリンに乗ったりしても、そこまで身長は伸びなかった。ならばと、筋肉をつけようとトレーニングをしたが、結果は惨敗。僕は鏡の前でまっちろい腕に力こぶを作ってみたが、全然ムキムキにならなかった。
高校生になり、僕の将来性に期待をして、学生服も大きめのサイズにしてもらったが、まだぶかぶかのままだ。しかし、これからあと2年は袖を倒す代物だ。挽回のチャンスはある。
極め付けには、この可愛らしい名前。昔から散々イジられたのだ。うんざりである。
僕は黒縁の眼鏡をずり上げ、改めて隣の男を見上げた。
スラリとした長い脚、小さくて美しい顔。彼に見合った清廉な名前。僕とは雲泥の差だ。
「神谷さんは……」
「うん? 怜桜くんって呼んでくれないの?」
「呼びませんけど」
「ええ〜、ケチ〜」
「神谷さんは最近こちらに越して来たんですか?」
「無視か〜。まあ、良いけど。そう、最近だね。すぐに仕事も終わるだろうと思ってたんだけど、ここらへんは面白いくらい悪霊が多いからね。調査も兼ねて、長期滞在することにしたよ」
「仕事」
「うん。俺の本業は祓い屋だから。学校はついでだよ」
「え、じゃあ、今まで勉強は……」
「ああ〜、なんとなくかな」
彼は異国からやって来たのだろうか。その若さで学業よりも仕事優先とは、どれほど壮絶な人生を歩んできたのか。彼はちゃんと授業についていけるのだろうか。密かに心配になった。
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