5 心労がすごい

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5 心労がすごい

*  数日経って頭の怪我が治ると、すぐにグレンは出仕するようになった。混乱を避けるために記憶喪失のことは内密にするらしい。忘れたのはリゼルにまつわる記憶だけだから、仕事には支障がない。  彼が長を務める王立騎士団の任務は、主に王都の治安維持と魔獣の退治だ。  魔獣とはこの国に昔から現れる人間に害なす獣で、おぞましい姿を持ち、普通の動物とは異なり体躯も大きく膂力も強い。そのため武技に優れた精鋭達が集まって、騎士団を編成し国民を守っている。  グレンが怪我を負ったのもこの魔獣と戦っていた時というから、戦場の激しさは察して余りある。リゼルとしては今度は無事に帰ってきますように、と祈るしかないのだが……。 「ただいま戻った、リゼル」 「お、お帰りなさいませ」  その夜、屋敷の玄関ホールでぱたぱたと出迎えたリゼルを認め、騎士服姿のグレンは眦を和らげた。肩にかけたマントを使用人に渡し、リゼルに向かって右手を差し出す。  そこには、可憐なローズマリーとゼラニウムの花束が握られていた。 「あ、あの……? これは……?」  フリルのようなゼラニウムの赤い花を、ローズマリーの葉が控えめに囲んでいる。ローズマリーの清々しい香りが漂い、鼻先をくすぐった。  可愛らしい花束を前にきょとんとするリゼルに、グレンは照れくさそうに言う。
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