6 魔法庭園へようこそ

1/6

207人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ

6 魔法庭園へようこそ

*  食事を終えた後、リゼルは息も絶え絶えに、自らの魔法庭園(ガーデン)へ足を向けた。  魔法庭園とは、魔女や魔法使いが作る特殊な領域。  結界を張り、その中に自らの魔力を隅々まで満たすことによって、魔法を発動しやすくできる。魔女や魔法使いにとっての城、要塞と言ってもいい。  マギナ家では魔法庭園を作れて一人前とされていた。けれどもリゼルには土地が与えられず、いつまでも半人前の魔女として留め置かれていたのだ。妹のメイユが魔法庭園を作り、どんどん領域を増やし、高度な魔法を組み立てていくのを指を咥えて眺めるしかなかった。 『お姉様はまだ魔法庭園を作れないの? 〈鳥の目〉持ちって本当に無様ね』  そう嗤われて、辛うじて手に入れた貴重な魔法書を目の前で破かれたのを、未だに覚えている。  仲の悪い姉妹だった。メイユは黒髪の美しい少女だったが、リゼルを玩具のように扱い、時々離れを訪れては、他の使用人とともに嬲った。そのくせ魔法に対しては怠惰なところがあり、父親から出された課題をリゼルに代わりにやらせるようなこともあった。リゼルとしては殴られるよりも課題の方が楽しく、助かったが。  そういうわけで、グレンから「好きにしろ」と言われて真っ先に取りかかったのが憧れの魔法庭園作り。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

207人が本棚に入れています
本棚に追加