8 デートの準備

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「リゼル様を着飾りたい人、集合! 集合ーっ!」  何事かと目を剥いていると、その呼び声でわらわらと侍女達が集まりだす。口々に「やっとこの機会が!?」「せっかく伯爵家に務めているのに奥様を着飾れなくて残念だったのよね」「奥様の銀髪に絶対この髪飾りが合うのよ」などと好き勝手言いながら部屋に入ってきた。好奇心に目を輝かせてリゼルを見つめるその人数、老いも若きも合わせてゆうに十を超える。 「えっ、何が……?」 「みんな、リゼル様と関わりたくて仕方がないんですよ」  最後に戻ってきたネイが、ぱちんと片目を瞑る。何を、と思っているうちに、侍女達がきゃいきゃいとリゼルを囲んだ。 「奥様にもらった魔法薬、本当に効き目がありました!」「いつも庭の手入れを手伝ってくださってありがとうございます」「洗濯場に魔法をかけてくださったおかげで、ずっと仕事が楽になりました」  リゼルは当惑とともに唇を震わせる。どれも以前、リゼルがしたことだった。少しでも役に立ちたくて、屋敷に魔法をかけて回った。でも誰からも無反応で、特に感謝なんてされていないと思っていたのに。  侍女達の手によってもみくちゃにされながら、リゼルはもしかすると、と思い直した。  自分は知らないものを見たいと言いながら、足元を照らしてくれる光の欠片を見落としていたのかもしれない、と。
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