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10 自覚する恋
*
グレンが連れて来てくれたのは、かつてリゼルが諦めた王都の中央通りだった。
石畳の敷き詰められた街路の両側に、三角屋根の煉瓦造りの建物が立ち並ぶ。青空に浮かぶ太陽が、よく磨かれた屋根瓦を照りつけて眩しい。
どうやら建物の一階部分は様々な商店の店舗となっているようで、その前を多くの人々がひっきりなしに行き交っていた。聞こえてくる会話には、リゼルの知らない異国の言葉が入り混じる。
「わあ……! とても賑やかなのですね。それに珍しいものがいっぱいです!」
目を輝かせるリゼルに、グレンが落ち着いた声で解説してくれる。
「王都は昔から交通の要衝だからな。大陸の各地から商人も集まってくるんだ。さて、何から見たい?」
「ど、どれにしましょう……! 迷ってしまいます」
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