10 自覚する恋

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 リゼルは子供のように両頬を押さえてあちこち見回す。グレンが微笑ましそうな眼差しで見つめているのにも気づかない。 「好きなだけ迷え。そうだな、例えばあれは仕立て屋だ。腕が良いと評判で、王宮の晩餐会のドレスを何着も仕立てているとか。もっとドレスは必要ないか?」 「いえ、特には。お気遣いありがとうございます」 「……向こうに見えるドーム型の建物が王立博物館だ。この国の考古遺物を中心に、所蔵数はおよそ十万点」 「まあ! 素敵ですね」 「わかった、まずは博物館にしよう」 「よ、よろしいのですか」  恐ろしいほどの即決にリゼルは慄く。どうしてリゼルが心惹かれたのがわかったのだろう。行きたいなんて言葉にしていないのに。  不思議に思って問い返そうとしたとき、背後から声をかけられた。 「あれっ、団長じゃないですか!」  振り返ると、グレンと同じ騎士服を着た若い男が立っていた。柔らかそうな茶髪に、くりくりとした丸い瞳が印象的な青年で、歳はリゼルより少し上だろうか。上品に整った顔立ちだが、体はよく鍛えられているのが騎士服の上からでもわかる。腰には長剣を帯びていた。  男は人懐こい笑みを浮かべ、軽やかな足取りでグレンに歩み寄ってくる。  一方、グレンは苦虫を噛み潰したような顔で男を見た。 「……ロズか」 「今日は非番でしょう? また自主的に見回りですか……って、その方は?」
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