10 自覚する恋

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 ロズと呼ばれた男が、たった今気づいたようにリゼルへ目を当てる。見知らぬ男に急に声をかけられ、リゼルは緊張して肩をこわばらせた。普段、知らない人と接する機会がないので知らず気後れしてしまう。 「え、えっと……」  口ごもっていると、グレンが隙のない動きでロズとリゼルの間に割って入った。 「彼女は俺の妻だ。あまり見るな、怯えさせる」  低い声音で応じた途端、「ええっ!?」とロズが目を見開く。  「あの伝説の奥方ですか!? 実在が危ぶまれていた!?」 「うるさい」 「うるさくもなりますよ。あ、奥様、僕はロズ・フライヤーと申します。王立騎士団の副団長です。団長の下で、日々こき使われています」  胸元に手を当て、にこにこと挨拶をしてくれる。つまりロズはグレンの部下だ。リゼルはグレンの背からおずおずと顔を出し、ぺこりと頭を下げた。 「リゼル・コーネストでございます」 「これはご丁寧にありがとうございます。お会いできて光栄です。実はここ最近、騎士団はリゼル嬢の噂でもちきりなんですよ」 「噂……?」  どんな悪評がばら撒かれているのかと身構えれば、ロズは無邪気な笑顔のまま続けた。 「あのおっそろしい団長が、魔女の奥方にだけは別人になったように甘々ってね! 一体どんな魔法を使ったのか教えていただきたいものですよ。そしたら鍛錬でも容赦してもらえるかもしれませんし?」
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