10 自覚する恋

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 聞き慣れぬ単語にリゼルはぴたっと動きを止めた。  対してグレンは何もかもを承知のようである。つまらなそうに鼻を鳴らすと、王様もかくやと傲岸に頷き、 「そうだが?」  「ほら、こんなことを言わせるくらいですもん。団長が花を買っているのを目撃したときは本当に驚きましたね。しばらく、花を使った新たな剣技でも編み出したのかと思われていたくらいですよ。あれ、リゼル嬢への贈り物でしょう?」  ロズに水を向けられ、リゼルは微かに顎を引く。 「は、はい。何度かお花をいただきました」 「怖くなかったですか? どう考えても団長は花を寄越す男じゃないでしょう」 「す、少し」  思わず正直に答えれば、またロズが弾けるように笑い出す。「そうだったのか?」と衝撃を受ける様子のグレンに、リゼルはちょっと俯いてつけ加えた。 「初めは、驚きました。で、でも、私は花が好きですし、嫌ではなく……。旦那様がきっと私を思って贈ってくださったのだと思うと、嬉しかったのも本当です」  顔が耳まで熱い。不思議だった。リゼルに花を渡してくれたのはグレンだけではない。ネイだってくれた。彼女の心遣いは胸を優しく温めてくれるのに、彼から贈られた花を思うと、どうしてか鼓動が速くなって、動きがぎこちなくなってしまう。
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