10 自覚する恋

6/15

212人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
 グレンが再度「そうだったのか」と今度は噛みしめるように呟いて、リゼルの頭に優しく手のひらを乗せる。ぽんぽんと頭を撫でられて、リゼルはいよいよ顔を上げられなくなった。子供みたいで恥ずかしい。  そんな二人の様子を、遠い目をしたロズが眺めていた。 「実は僕、団長の真似をして好いた娘に花を贈ったんですが、普通にフラれましてね。何がいけなかったのか、薄々わかってきた気がしますよ。あの子は別に花が好きじゃなかったし、僕はそれに気づけなかったんだろうなあ」  苦笑まじりにぼやくと、彼は長剣の柄に左手を置き、ひらりと右手を振ってみせた。 「お二人はデートでしょう。お邪魔するわけにはいきませんから、僕はここらで退散します。団長、次の鍛錬を楽しみにしていますね!」  彼が爽やかに言って背を向けようとしたとき。  大通りに甲高い悲鳴が響き渡った。 「何が……?」  リゼルが呆然と呟いたときには、騎士の二人は駆けだしている。見れば大通りの先、市庁舎や教会の建物に囲まれた広場の方に、大きな影が舞い降りていた。  ――魔獣だ。  リゼルも見るのは初めてだった。シルエットは巨大な鳥に似ている。鋭い嘴がぎらりときらめき、前脚には大きな鉤爪がついている。しかしその後ろ脚は獅子のそれで、一蹴りされればひとたまりもないように見えた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

212人が本棚に入れています
本棚に追加