10 自覚する恋

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 その魔獣が広場に降り立ち、人々に襲いかかっていた。鷲のような羽根をはばたかせれば、旋風に巻き込まれて幾人かが吹き飛ばされる。奇怪な咆哮が激しく空気を震わせた。人々は悲鳴をあげて逃げ惑い、瞬く間に辺りは混乱に陥る。 「リゼルは安全な場所に避難しておけ!」  先を行くグレンが振り向きざまに叫んだ。その横を走るロズはすでに長剣を抜いている。リゼルはハッとした。 「お、お待ちください、私も……!」  広場から逃げようとする人の流れに逆らって何とか広場まで辿りついたときには、グレンとロズはすでに魔獣と対峙していた。  広場は四方を建物に囲まれ、リゼルがちょうど駆け込んできた、南側の一角だけが大通りに繋がるように開いている。  人々はそこから逃げだし、あるいは建物の中へ駆け入り、広場の中央で唸り声をあげる魔獣の周りにはぽっかりと空間が生まれていた。 (お、大きい……! こんな怪物と戦うの?)  白色の羽毛に包まれた魔獣の頭は、二階建の庁舎の屋根に届くほどだ。広場で屋台が出ていたのか、破れた天幕が風に舞い上がり、壊れた木材がいくつも小山を作っていた。背後からは人々の悲鳴と怒号が絶え間なく聞こえてくる。  グレンが険しく魔獣を睨みつけ、ロズに指示を出していた。
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