10 自覚する恋

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「ロズ、お前は市民の避難誘導にあたれ。誰かが転倒すれば大事故になる。すぐに騎士団も来るだろう、あいつらと合流してからこっちを援護してくれ」 「団長一人では危険です、僕も戦います!」  顔を真っ赤にしたロズが怒鳴り返すが、グレンは落ち着いた物腰で部下の構える長剣を指差す。 「ダメだ。剣が一本しかない。ロズと俺なら俺の方が強い。第一、部下を一人で最前線に放り出すつもりはない」 「だからって――」 「旦那様!」  リゼルは言い合う二人に駆け寄った。荒くなった息を整える暇もなく髪を一本引き抜き、魔法で長剣に変える。戦いも何もできないが、こういうことはリゼルの得意分野だった。 「これをお使いください。ロズ様の物を複製しました」  当然のように避難指示を無視して追いかけてきたリゼルに、グレンは一瞬眉を寄せる。しかし差し出された長剣を受け取り、軽く振って具合を確かめると、獰猛な笑みを見せた。 「素晴らしい精度だ。感謝する」 「はい……!」  リゼルは祈るように手を組み合わせる。と、ばさりと魔獣が羽振いて、辺りにつむじ風を作り出した。「きゃっ」と突風に押されてよろめいたリゼルを、グレンがしっかりと抱き止める。 「リゼルはここまでで良い。建物の中に避難していろ」 「わ、わかりました。どうかご武運を……!」
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