10 自覚する恋

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 頑張って目を向けると、右肩を庇ったロズが明るい笑みを見せる。 「大した傷ではありませんから心配しないでください。ですが、無様をお見せしてしまいましたね」  笑顔でも眉尻は下がり、心底情けなさそうな口調だった。リゼルは顔を赤くしつつも、ぶんぶんと首を横に振る。何もできなかったリゼルに比べれば、ロズは立派に役目を果たしていた。 「いえ、庇ってくださってありがとうございました」 「そうだ。市民を守るのが王立騎士団の責務だが、咄嗟に身を呈することはなかなかできない。俺からも礼を言わせてくれ」  リゼルを離し、グレンもロズに向き直る。騎士団長からのまっすぐな称賛に、ロズの目が潤んだ。 「団長……リゼル嬢……」  震え声で応じてぐっと唇を引き結んだかと思うと、ぐすっと洟をすすってそっぽを向いてしまった。 (……誰も命を落とさなくて良かった。これも旦那様のおかげだわ)  涙ぐむロズの横顔と、長剣を鞘に収めるグレンの冷静な顔を眺めていると、何とはなしに胸の底が温かくなる。そういえば他の人々はどうしているだろうとぐるりと四囲を見回したとき、広場がわあっと歓声に包まれた。 「さすが氷壁の騎士団長だ!」 「コーネスト団長ってすごく強いのね! 見た? あの剣さばき!」 「あの副官だっていい動きをしてたぜ、やっぱり騎士団は頼りになるなあ!」
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