11 襲撃

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「強情ね、お姉様。勘違いも甚だしいわ。まさかこんなことになるなんて思いもしなかった」 「……一体何を」  訝しく問い返すと、メイユは細い指をドレスの隠しに入れ、小瓶を取り出した。中には乳白色の靄のようなものが入っている。  靄から漂う魔法の気配に、リゼルはハッと息を呑んだ。メイユの笑みが嗜虐に歪む。 「せっかくグレン・コーネストを襲って記憶を奪ってあげたのに」 「まさか――」  その発言の意味するところを悟って顔色を変えたリゼルに、メイユは満足そうに頷いてみせた。 「そうよ? 魔獣退治の事故を装って、私があの男からお姉様の記憶を奪ったの。あなた達が仲睦まじい夫婦だという噂は聞かなかったし、記憶をなくせばお姉様も離縁されると思ってね。驚いたかしら?」  ぐらりと視界が回る。今晩彼女がここを訪れた時から、そうではないかと疑っていた。けれど実際に突きつけられるとなかなか堪える。小瓶に渦巻く靄のきらめきから目を離せなかった。  マギナの魔法系統では、記憶を操るのは難しいとされていたのに。メイユはそれを成し遂げたというのか。  これは家族に裏切られたショックなんかでは全然ない。自分より先んじた妹への劣等感でもない。  これは、ただの。 (そう……マギナの魔法はそこまで進んだのね、なんて素晴らしいことなのかしら!)
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