3 冷酷な旦那様

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3 冷酷な旦那様

*  その数年後、祖父は亡くなった。しかしグレンの祖父によって約束は果たされ、十七歳の誕生日、リゼルはコーネスト伯爵家へ嫁入りする。  確かにリゼルの祖父は、結婚という形で孫娘を外へ連れだしたのだった。  リゼルにとっては嬉しかった。伯爵家の屋敷のある王都にはたくさんの人がいて、異国の魔法書もあって、マギナ領の離れにいては一生手の届くことのなかった世界が広がっていた。  が、この話で最も被害を被ったのはグレンである。家のためとはいえ祖父の一存で結婚を決められ、その相手が得体の知れない魔女だというのだから、彼の憤懣は推して知るべし。  結婚初夜、花嫁として夫の寝室を訪れたリゼルに対し、礼装姿のグレンは冷たく言い放った。 『これは政略結婚だ。マギナ家の血を我が家に引き入れるためのな。だが俺は君に手を出すつもりはないし、愛することもない。どうせ爵位は兄が継ぐ予定だ。祖父の命令で結婚した以上は離縁もしないが、俺に関わるな。それ以外は好きにしろ』  夫となったはずの男の瞳は冴え凍るようで、その長躯からは反論を許さぬ威圧感が発されていた。リゼルは脂汗を流してすごすご自室へ引っ込みながら、心に固く誓った。  ――絶対に旦那様のお邪魔はしないようにしよう、と。
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