11 襲撃

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「ちょっと、わけわからないこと言わないでよ。これは現実よ? お姉様はマギナ邸にいて、今から離れで調教されるの。もう二度と、マギナ家から離れようなんて考えもしないように」 「何とでも仰ってください。私はもう看破しています。自分の作った魔法くらい、いつでも解除できる」  夜空を照らす、金貨を割ったような月。それを映したように、リゼルの金の瞳が爛々と輝く。メイユのこめかみに脂汗が滲んで頬に伝った。 「な、何でそれを……」  うわごとのようなメイユの独言に、リゼルはこの上なく美しく微笑んだ。 「頬を打たれた時にわかりました。この魔法では、痛覚だけは再現できないようにしたから。だって、夢の中に辛いことなんて必要ないでしょう」  これは最後の手段として開発したのだった。いつか遠くない終わり。この世の全てに絶望してしまった時に、リゼルは己に幻覚魔法をかけて、幸せな幻を見て命の終わりを待とうと決めていたのだ。  ――けれど今となっては無用だから。 「はあ!? 何よそれっ! 知らなかったわよ!」  メイユが喚く。それももう耳に入っていなかった。リゼルはすでに興味を失い、短剣を拾い上げて土を払っていた。  もはや血など必要ない。わずかに髪の先を切り取って、ふっと息を吹きかけた。  それでおしまいだった。
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