11 襲撃

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 カタカタ震える指先を握ろうとして失敗した。爪が手のひらの傷に食いこんで、鈍い痛みが走る。かすかに息を詰めたリゼルに、グレンがハッと視線を移した。 「酷い怪我だ。頼むから、今日はもう大人しくしていてくれ。こんな事件ばかりで、寿命が十年くらい縮んだ気がする」 「ご心配をおかけして申し訳……」 「謝らなくていい。俺は俺のしたいことをしているだけだ」  グレンは手早くリゼルの手に手巾を巻きつけると、「それで」とメイユに顔を向ける。 「おおよそ話は聞いた。貴様はリゼルの妹だな。俺の妻に手を出して、まさか無事に帰れると思ってはいないだろうな?」  結婚以来、リゼルが聞いたことのないほど冷ややかな口調。一番恐ろしかった初夜でさえ、それなりに容赦されていたのだと今更ながらにリゼルは納得する。  凍てついた瞳で睨まれて竦み上がったメイユだが、しかし負けじと小瓶を見せつけた。 「お待ちください! 妻だと言いますが、あなたは記憶がないからその女を大切にしているだけですわ! 失われた記憶を取り戻せば、その女がどれだけ凡庸で価値がないかお分かりになるはず。どうか元に戻ってください!」 「……ほう」  グレンが押し殺した声で応じる。それからちらりとリゼルに目を当て、本当にどうでもよさそうに肩をすくめた。 「俺はどちらでも構わない。リゼルが選べ」
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