11 襲撃

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 小馬鹿にするような笑みを作ったメイユが、ゆっくりと近づいてくる。最後の一歩が埋まると思った刹那、最後の足掻きか、メイユが手を振りかぶった。  決着は一瞬だった。メイユの魔法が発動する前に、グレンが素早く当て身を食らわせ昏倒させた。リゼルの目ではしかと捉えられないほど鮮やかな手並みだった。 「本当に見下げ果てた女だ。――リゼル、指一本触れられていないな?」 「は、はい……」  地面にメイユが倒れ伏す。受け身も取れなかったからか、鼻から血が流れ出ていた。力なく投げ出された手から、ころころと小瓶が転がってくる。  リゼルは小瓶を拾い、手の中のそれを見つめた。そうして、ちょっと首を傾げた。 「……あら?」  物体化した記憶を見るのは、リゼルも初めてだ。けれどリゼルはずっと研鑽を積んできた魔女で、だからこそ、魔法に関する物に関しては鋭く研ぎ澄まされた天性の才覚があった。  だからわかった。  ――これは、グレンの記憶ではない。  どういうことかと戸惑って、思わずグレンを見上げる。彼は気まずげに目を伏せていた。 「これは……どういう?」  グレンが何か知っている風なのが気にかかった。リゼルは魔法については詳しいが、こと陰謀などになるとからきしだ。
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