11 襲撃

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 月に雲がかかり、辺りが闇に沈む。吹きつける風が、魔法庭園のガラス戸をガタリと鳴らした。暗夜の向こうから、秘密を打ち明けるようにひそめられた声が届いた。 「俺の愛する魔女は、記憶の戻し方を教えてくれた」  グレンが小瓶を取り上げる。かと思うと、コルク栓を開け、躊躇いなく中身を口に含んだので、リゼルは飛び上がった。 「正体のわからないものを飲むのは危険で……んっ」  悲鳴は、柔らかく重ねられた唇の間に消える。初めて知る感触にパニックになったリゼルは、けれど脳裏に何かが流れ込んでくるのを感じ取って、抵抗をやめた。  ――それは、リゼルの記憶だった。
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