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13 エピローグ
*
目を覚ますと、見慣れた自室の天井が広がっていた。
あれからどれくらい経ったのだろう。窓の外には夜の帳が下りて、部屋全体が薄暗い。
リゼルはベッドに寝かされているようで、頭の下に柔らかな枕の感触があった。
「旦那様……?」
そう声をあげたのは、傍に置かれた椅子にグレンが座っていたからだ。軽く腕組みをして眠っている。
リゼルは起きあがり、部屋を見渡した。サイドテーブルには水差しやら果物やら花の活けられた花瓶やらが満載で、ぼうっとしてしまう。窓から差し入る月光に、林檎の赤とガーベラの白色が浮かびあがって綺麗だった。
色彩に見惚れていると、横で衣ずれの音がする。リゼルははっとそちらを見た。
「リゼル……起きたのか」
グレンが目を開け、心配そうにリゼルに視線を注いでいた。
「調子はどうだ? どこか痛みはないか? リゼルはもう三日も寝込んでいたんだ。屋敷中大騒ぎで、見舞いが絶えなかった。その果物やら花やらは、全部使用人達が持ってきたんだ」
「み、三日も? なんてご迷惑を……!」
記憶に干渉する魔法は、思いのほか体に負荷をかけるらしい。改めてサイドテーブルに目をやる。うずたかく積まれた果物も、可憐に咲く花々も、思えばリゼルの好きなものばかりだった。きっとネイには一番心配をかけただろう。申し訳ない。
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