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「でも、体調は大丈夫です。吐き気も目眩もありませんし、記憶の連続性にも問題ございません。体の動きも問題なさそうです」
両手の指を曲げ伸ばしして答える。不思議なほどに意識は冴え渡っていた。どうやらリゼルの魔法はある程度成功していたらしい。
けれど、まだまだわからないことはたくさんあって、リゼルは恐る恐る訊ねた。
「その……記憶は戻ったのですが。実際のところ、何が起こっていたのですか?」
グレンは目をそらさなかった。答えを求めるリゼルの眼差しを受け止め、ゆっくりと話し始める。
「リゼルが俺に保護魔法をかけた後、表向きは何も変わらなかった。リゼルは記憶をなくしているし、俺も静観して、相手の出方を窺うことにした。リゼルの魔法があれば、再度襲撃を受けても平気なはずだからな」
そこまで信頼されていたのかとこそばゆい心地になる。無事に発動して本当に良かった。
「そうしているうちに、あの日――マギナ家が襲ってきた。魔獣退治中、今度は不自然に廃墟が崩落して、それに巻きこまれたんだ。だが思った通り、リゼルの保護魔法で俺は無事だった」
崩れた廃墟の中で、グレンは他に被害者がいないか見回っていた。そこに、足音がしたのだという。
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