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「メイユ・マギナだった。俺はとっさに気を失っているふりをした。あの女は俺に近づいてくると、何か魔法をかけたようだった。その時に記憶を奪うとか何とか言っていたから、その通りに振る舞うことにしたんだ」
「そこでメイユを捕らえてはいけなかったのですか?」
「証拠がない。おそらく廃墟の崩落も魔法でやったのだろうが、マギナ家以外が魔法を扱わないこの国においては、それを明らかにする方法がない。当然、マギナ家が犯行を認めるわけもないしな」
言われてみればそうである。リゼルにとって魔法は生まれた時から存在するものだから、考えが至らなかった。
「俺が記憶を失っていると思ってもらえば、相手も油断するだろう。言い逃れのできないところを押さえるつもりだった」
「そ、そうだったのですね……」
全く思い切った作戦である。
「で、では、今マギナ家はどうなっているのですか? メイユは?」
問うと、グレンは気遣わしげにリゼルの手に触れた。その仕草一つで、あまり良くないことになっているのだろうと見当がついた。
「メイユ・マギナは実行犯として王宮の地下牢に入っている。今回の事件を指示した両親とともにな。マギナ家は爵位を剥奪され、今後、王国の管理下に置かれる。そして……魔法の使用を永久に禁じられる」
「えっ?」
ぎょっと目を見開いたリゼルに、グレンは平坦な調子で続けた。
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