3 冷酷な旦那様

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「ネイ、好きよ。ネイがいなかったら、私はもっと寂しかったと思うわ」 「リゼル様……やっぱり、こんな家にいるのは止めません? 寂しい思いをすることないですよ」 「ネイったら……」  困り顔で窘めようとしたとき、ベッドの上から小さな呻き声が聞こえた。 「だ、旦那様!?」  ぱっと手を離し、リゼルは急いでグレンの顔を覗きこむ。端正な面差しの中、柳眉がしかめられ、長いまつ毛が震えたかと思うと、うっすらと瞼が開いた。その下から覗く切れ長の瞳が、陽光を受けて翡翠色にきらめく。 「お、お加減はいかがですか。どこか痛いところはございませんか」  リゼルが声をかけるも、グレンの目は望洋と天井を彷徨うばかり。これは早くお医者様を呼ばなくては、とベッドのそばから離れかけたとき、はっしと手首を掴まれた。ちょっと骨が軋むくらい強い力だった。 「どうかされましたか?」  枕元に戻って訊ねるリゼルを、グレンがじっと見つめる。鋭い視線が、リゼルの大きな金色の瞳を、小さな唇を、結いもせずに背中に流しただけの髪を、簡素なドレスを、探るように行き来した。  そしてしばしの沈黙の後、グレンは訝しげに言った。 「君は、誰だ?」
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