アイラブユーを聞かせて

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どうしてここに?っという不信感を抱きつつ、駅前で人通りも多いこの場所でこの人が何かしてくる可能性は低いと思い、、 平然を装いながら彼と向き合った。 「お疲れ様です、八雲先生…偶然ですね、今帰りですか?」 当たり障りのない、定型文のような会話を淡々と述べた私を見て…何が可笑しかったのか、、彼は口角を上げて笑った。 その表情が何だか不気味で、思わず身構えてしまう。肩からかけていたバッグの持ち手をグッと強く握って気を紛らわせた。 「……迎えに来たんだ。僕と一緒に帰ろう」 理解不能なその発言に全身に鳥肌が立つ。これが冗談だとしたらとても悪質だと思うし…全く笑えない。 「な…に、言ってるんですか?意味がよく分からないです」 「あの美容師の彼氏に、浮気されてるんでしょ?君みたいな素敵な彼女がいるのに他の女性と関係を持つなんて…僕には理解できないけど。その分僕が幸せにしてあげたいって思ったんだ」 余計なお世話だ、っとハッキリ言ってやりたかったが…何を考えているのか分からない人間を変に刺激するのは良くないことのように思えた。
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