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「だから、夕飯は要らない…ごめん」
「いや…それは別にいいけどっ、出掛けるって今から?もうすぐ十二時だよ?こんな夜中にどこ行くの…?」
「さっきも、話したけど…鷺坂が女に振られたとかで酔いつぶれてるみたいだから。迎えに行って、家まで送ってくる」
うわの空だった私に颯斗が話しかけた内容は、どうやらこの話だったみたいだ。
「鷺坂さん…って、確か美容学校の時の友達、」
「あぁ…酔いつぶれて飲み屋で爆睡してるらしい。一緒に居る連れから”迎えに来て欲しい”って連絡があった」
颯斗の専門学校の時の友人である鷺坂さんという人は…見た目も派手で、女遊びがとんでもなく激しいチャラついた男性で。
よくウチに遊びに来て、宅飲みをしたりすることもあったので何度かお会いしたことがあるのだが…
颯斗のことをコンパに誘ったり、クラブに行こうと連絡を寄越してくる彼に対して…昔からあまり好感を持てなかった。
「……それ、颯斗が行かなきゃダメなの?他にも友達が一緒に居るなら、タクシーで皆で帰ればよくない?…仕事帰りの颯斗をこの時間に呼び出すって、常識的にちょっと、」
「俺、明日休みだから…アイツらにも暫く会ってないし。困ってるなら助けてやろうと思って。」
「で…でもっ、もう遅いし…何かあったら、」
「いや…俺飲んでないよな?別に菜々が心配するようなこと、何も無いと思うけど」
一応、私の許可が下りるまでは出ていくつもりはないみたいだが…先程から颯斗のものだと思われるスマホのバイブ音が静かなリビングに響いている。
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