アイラブユーを聞かせて

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「……次の電車に乗ればギリギリ間に合うから、もうそろそろ出ないと」 煩く胸を打つ心臓を落ち着かせながら、身体を起こして今度こそ家を出ようとした私に─… 「車で送ってやるから、三分で着替えろ」 「……え…?」 耳を疑うような発言に、思わず聞き返してしまったが…どうやら聞き間違いでは無かったみたいで。 「職場まで、送ってやるから─…いつもの菜々に戻れって言ってんだよ。そんな服装で仕事に行くなんて、俺が許すわけ無いだろ。早く着替えて」 私を残し寝室を出ていってしまった颯斗。予想外の展開に、先程から胸が高鳴ってばかりだ。 (……蕎麦からパスタになれたのかな?) っと、ほんの少し期待しつつ…いつものカジュアルなパンツスタイルに着替えてリビングに向かえば、、 既に着替えを済ませた颯斗が、立ったまま片手でクロワッサンを頬張り…私が作ったハムエッグを流し込むように口の中へ放り込んで咀嚼している姿が視界に入った。 ……美容師として働くようになってから、、 多忙でお昼ご飯を食べる時間がない日も多くあったせいなのか、少しの空き時間で軽食を早食いする習慣がついたみたいで。 お行儀が悪く、褒められた行動では無いが…作った朝ごはんをしっかり食べてくれる様子が見られて、私としては……とても嬉しく思った。
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