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「……下手くそ」
っと言って、私の髪に指を通した。
「あ…うん。颯斗がいつもしてくれるみたいに上手く巻けなかった」
毛先に少しカールをつけた程度だが、さすが美容師。私が髪を巻いていることにちゃんと気が付いていたらしい。
「当たり前、菜々は不器用だろ。出掛ける時は俺が支度してやるから…仕事に行くためだけに髪を巻いたりするのはもうやめろ」
「そんなに変かな?似合わない…?」
「……………全然、全く似合ってない。だから俺と出かける時以外に勝手に髪を巻くのは禁止」
…何だか少し間があった気がするけど。
プロが言うなら…そうなんだろう。慣れないことはするもんじゃないな、もっと早く気付くべきだった。
とはいえ、裏を返せば一緒に出掛ける時は私の髪を颯斗に任せてもいいと許可が降りたようなものなので…ここは素直に喜んでおこう。
信号が赤になり、車がゆっくりと停車した。何気なく窓の外に視線を流すと…欠伸をしながら横断歩道を渡り始めた人物に目がいった。
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