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「あ…八雲先生、」
私が勤める歯科医院で歯医者をしている、八雲先生が寝癖のついた髪をそのままに…ボーッとしながら横断歩道を渡っている姿が視界に入り、、
職場のすぐ近くまで来ていることに気付いた。
颯斗と居ると時間がすぐ経過してしまう。
長年一緒にいるのに、もっともっと…って欲張りになってしまうほどに…私は今でも颯斗のことが大好きで堪らないのだ。
「……八雲、って誰?」
突然、低い声で尋ねられ驚いたが…颯斗に八雲先生の話をしていなかったことを思い出し慌てて彼のことを口頭で紹介する。
「あそこ、ほら…眠そうに歩いてる男の人!ウチの歯科医院の院長の甥っ子さんらしくて。一週間くらい前から一緒に働いてるの」
院長も老齢で腰が悪く、元々八雲先生に跡を継がせるつもりだったみたいで。今は二人の先生が交代で勤務するような形態になっている。
「……なにそれ、聞いてないけど。」
「歓迎会とかもあったけど、夜だから私は行ってないし…仕事以外で話したこともないから別に颯斗に報告する程のことでもないかな…って。」
「へぇ…そう。」
何だか少し不機嫌になってしまった颯斗を横目にそろそろ着きそうなので降りる支度を始める。
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