アイラブユーを聞かせて

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「……鷺坂さん、昨夜は颯斗と話せなかったんですよね。私のことは気にせず相席…どうぞです」 タブレットを手にして、ドリンクメニューのページを開いて彼に手渡せば…嬉しそうに「ありがとう」と笑ってそれを受け取り、颯斗の隣に腰掛けた鷺坂さん。 その直後、気だるそうに立ち上がった颯斗がため息をつきながら…私の隣に移動してきて腰を下ろした。 「菜々ちゃん、久しぶり!髪かなり伸びたね?相変わらずツヤツヤしてて触り心地良さそ〜…さすが颯斗、毎日ケアしてあげてるんだ?」 彼は颯斗の美容学校の友人なので…もちろん職も颯斗と同じで美容師さんをしている。 顔を合わせるとまず第一声、髪の毛について語るのは…一種の職業病なのだろうか? 「別に、俺は何もしてないけど」 「えー…俺は毎日、彼女の髪の毛乾かしてあげてたけどなぁ…まぁ振られたんだけど。」 「どうせまたすぐに新しい女と連絡取り始めるんだろ?お前の失恋話なんて、明日には惚気話に変わってる」 「まぁね…早速この後、店の後輩スタッフと夜のレッスン始める予定」 ………ん? お店の後輩と、夜のレッスン……?!! 夜のレッスンって何?!夜のレッスンって何?! (大事なことなので二回、心の中で繰り返した) 普通のレッスンと違うってこと?夜のレッスンってまさか、いや……そんなはず、、、 聞き捨てならない発言に、思わず逸らしていた視線を鷺坂さんに戻してジッと見据えてしまった。
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