アイラブユーを聞かせて

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美雪と別れてからの帰り道の足取りはとても重たいものだった。 颯斗は今のお店で副店長を任されていて、営業終わりには新人スタッフの教育育成のために残業代もつかないのに練習に付き合ったりしている。 新卒の頃の颯斗もアシスタント見習いとして、夜遅くまで残って練習していたのを知っているから…今はその時の経験を活かし、後輩に指導してあげているのだと理解しているつもりだ。 だけど──… たまに日を跨いで帰ってくることがあって。 『…遅かったね。本当に練習に付き合ってるだけ?こんなに遅くなるの、おかしくない?』 っと、颯斗を責めてしまったこともあった。 『…は?なに、疑ってんの?見て分かんだろ。俺すげぇ疲れてんだけど…この話、まだ続ける?』 心底鬱陶しい、という顔を向けられ…それ以来怖くて同じことを聞くような勇気はなかった。
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