842人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
記念日おめでとう、なんてメッセージのやり取りをするようなことはない。
そもそも、今日を記念日だと颯斗が認識しているという確証もない。ただ…私が勝手にこだわって料理に気合いをいれているだけに過ぎない。
21時を少し回った頃─…
【今から帰る】
というメッセージが届いて、慌ててロールキャベツを温め直す。
颯斗の職場から家まではそう遠くないので、車通勤の彼がこのメッセージを送信してくると…割と直ぐに時間を空けずに帰宅してくることが多い。
だから今日も21時半には、、ガチャ…っと玄関の扉が開く音がして。
「……ただいま」
リビングに一度顔を出してから、お風呂場へと足を進める颯斗を慌てて追いかけて、、
「おかえり颯斗、遅くまでお疲れ様」
っと笑顔で声をかける。そんな私を振り返ってはチラりと一瞬目を合わせた後、スーッと私の髪に指を通す颯斗。
彼が定期的にメンテナンスをしてくれる髪は、私自身とても気に入っている。サラツヤのロングヘアは友人や同僚にもいつも褒めてもらえる自慢の髪だった。
「……菜々も、おつかれ」
そう言ってお風呂場へと消えていった颯斗を見送り…ドクン、と高鳴った胸に手を当てながらリビングへと戻る。
ほんの一瞬、口角を上げて笑みを見せてくれた颯斗。それに加えて“おつかれ“という言葉までいただけるなんて…今日は、機嫌がいいのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!