アイラブユーを聞かせて

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勝手に押しかけたら迷惑だと思われるかもしれない。そんなことは百も承知で…来てしまった、彼の勤め先の美容院。 ガラス張りになっていてお店の中がよく見える。 中に入らずとも、外から見つけることが出来た颯斗の姿。もう営業時間は終わっているのか、お店のスタッフの人たちと談笑している様子が見て取れた。 髪の毛の話をしているのか…一人の女性スタッフが自らの髪を触りながら颯斗に近付いて行くのが見えた。 セット椅子に座ったその女性スタッフの髪に、なんの躊躇いもなく颯斗の手が触れたのを見て…胸が締め付けられた。 最後に私が颯斗の勤め先の美容院の中に入ったのは…もう何年も前のことだ。彼がアシスタントをしていた頃は毎週のようにカットモデルやカラーモデルとして、このお店を訪れた。 それも、颯斗がスタイリスト試験に合格し…技術者として働くようになってから無くなってしまったので… こうして実際に颯斗が誰かの髪に触れているところを目の当たりにするのは初めてだったりする。 颯斗にとってはこれが日常で、当たり前のことなのだろうけど…今の私にはなかなか辛い光景だった。 少し異性に髪を触れられただけで騒いだりして、情けない。自意識過剰にもほどがある…こんなこと颯斗に相談したら呆れられるに決まってる。 「……帰ろう」 ここに来たことを颯斗に知られる前に─…
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