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しばらくして…玄関の扉が開く音が聞こえてきて、颯斗が帰宅したことを悟った。
一度寝室の前を通り過ぎて、リビングに向かう颯斗の足音を聞きながら…静かに目を閉じた。
朝、微妙な空気のままお互い仕事に向かってしまったので…ちゃんと話し合いたい気持ちもあるが…今日はもう何も考えずに眠ってしまいたかった。
しかし、そんな私の願いが颯斗に届くはずもなく…リビングに向かったと思われた颯斗の足音がこちらに近付いてくるのが分かった。
ガチャ…っと、寝室のドアが開かれた音がして颯斗が入ってくる気配を感じて閉じていた目を開いた。
「菜々、起きてる…?まだ体調悪い?」
ベッドの横に腰をおろして、寝転んでいる私と目線を合わせた颯斗。心配そうに顔を覗き込んできては、ピタッと額に手のひらを当てた。
「……熱は、無さそうだな」
そう言って私の額から手を離した颯斗は、そのまま私の手を取って…ギュッと包み込むように握った。
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