ロストワン

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 自室に戻り、パソコンを立ち上げてソースコードを入力する。宿題だ。大学のではない。内定の決まった会社のだ。  採用が決まったとき、「明日からでも働けます! 働かせてください!」と言ったら「それは無理だけど、じゃあ入社までにこれやったら? 宿題ね」と渡された課題だ。本当は入社後最初に与えられるものらしいが。  でも本当に、春からあそこで働けるのは嬉しい。『株式会社ロストワン』――亡くなったペットの性格をAI技術によって再現し、そっくりのロボットを作る研究をしている会社だ。  なぜ生身でなくロボットなのかというと、クローン技術は法律で禁止されているのと、潜水艦コロニー内でのペットの飼育は禁止だからである。  閑話休題。とにかく、私は愛犬のミソをよみがえらせたいし、自分と同じようにペットを失った人たちに希望を与えたいのだ。 「ふぅ。今日はここまでかな」  パソコンをシャットダウンさせる。壁掛け時計を見ると、あと十数分ほどで夕食の配給の時間だ。  窓の外を見る。真っ黒だ。今も地上では雨が降り続けている。いつか雨は止むのだろうか。止まない雨はないというけれど。 「絶対に、生き返らせてやるからな」  ロケットペンダントの中の写真に映るミソにつぶやいた。もしいつか、いつか晴れたならまた一緒に散歩に行こう。君は、雨上がりの景色が好きだったから。
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