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「あんた、またVRやってたの?」
ゴーグルを外すと母が仁王立ちで立っていた。
「別にいいじゃん。自分のお金なんだから」
「そうじゃなくて、最近大学行ってないでしょ」
説教が終わらないうちに、ハッチを開けると部屋の外に出た。ハッチを閉めると静かになった。
「別に、もう就職決まってるからいいだろ」
ため息をついて、懐からロケットペンダントを取り出す。開けると中に写真が入っていて、舌を出して笑う犬の姿があった。
「ミソ……」
雨上がり、一緒に散歩するのが日課だった。今はもう、雨は止むことはない。窓の外を見る。真っ黒だ。窓の外は上も下も、右も左も、すべて水で埋め尽くされている。
ずっと、雨の日が続くようになった。そしていつしか雨は止まなくなって、世界は水没した。生き残った人類は水中に巨大な潜水艦のコロニーを作り、そこで生活している。
「あ、お前まーだ犬の写真持ってんのかよ」
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