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男は人懐っこい笑みで「よ!」と片手を上げた。友達の中村だ。
「まだって……。ミソのことは一生忘れないよ」
そう。ミソを国に殺されたことは、一生忘れることはない。潜水艦コロニーに移住するとき、貴重品以外はすべて処分させられた。もちろんペットも例外ではない。
「はぁ、たかが犬だろ」
「なんだと!?」
中村の首根っこを掴むと
「悪かったよ」
謝ったので放してやった。
彼のこういう馬鹿で無神経なところが嫌いだった。もちろん悪いやつじゃないんだけど。というか、母とコイツ以外気心の知れた人がコロニー内にいないので、付き合う人間をえり好みできる立場にないのだが。
中村は襟を整えると、中庭(といってもすべてホログラムだが)のほうに去って行った。
ビービービービー!!
「ご飯の時間だ」
サイレンが鳴り止むと、機械音声が流れだした。
『A-001から050までの方、配給です。ただちに食堂に集合するように』
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