【17話】生まれて初めて、魔法を使うことが出来ました。……でも、威力がおかしいです

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【17話】生まれて初めて、魔法を使うことが出来ました。……でも、威力がおかしいです

「明らかに人とは異なる動き方をするものが、十二個……」 「それってつまり、ゴブリンが十二体も……?」 「多分、そうなる」  十二体は予想外だ。  ゴブリンは動きが比較的早く、がむしゃらに攻撃を仕掛けてくることが多い。  上位種が居なければ統制を執ることはほぼほぼないのだが、だからこそ想定外の動きをしてくるので厄介といえる。  十二体のゴブリンが一斉に攻撃を仕掛けてきた場合、さすがに二人では対処することが出来ないだろう。 「場所は遠いんでしょうか?」 「ここから歩いて、二分ぐらいってところかな」 「それなら、まだ匂いで気づかれることもないでしょうし、今のうちに引き返しましょう」 「引き返す? 随分弱気だけど、勝てないと思ってる?」 「当然です。だって、相手は十二体ですよ? わたしたちは二人パーティーなんですから、一人で六体を相手にするのは危険すぎます」  ここは引いて、一体だけで彷徨う個体を見つけるべきだ。  だが、ロイルは首を横に振る。 「ノアの攻撃魔法があればさ、問題なく対処可能だと思うけど?」 「魔法を使えるようになったといっても、詠唱には時間が掛かります。それに外すこともあると思います」 「攻撃魔法一回につき、一体しか倒せないわけじゃないよね」 「そ、それはそうですけど、そんな上手くいくわけが……」 「物は試しに撃ってみればいいんだよ。そうだなあ……例えばここから【アイシクル】を真っ直ぐ撃ってみるとかさ」 「まだ姿も見えてないんですよ? そんな無駄撃ちは――」 「僕を信じて」 「ッ」  信じて、とロイルに言われる。  たったそれだけのことで、ノアは心が揺れた。 「……一回だけです。これが終わったら、すぐに引き返しますからね?」 「引き返すか否かは、撃ってからもう一度考えてよ」 「もうっ」  ロイルは、ノアの忠告を受け取った。その上で、【アイシクル】を撃てと言う。  であれば、撃つしかない。 「……いきます」  魔力ゼロの身ながら、ノアは過去に幾度となく呪文を唱えたことがあった。そしてその度に失敗し、落胆していた。  けれども今、ノアの魔力はゼロから十マナへと増えている。  体全体が、ざわつくのを感じる。  いつもよりも念入りに詠唱し、眠りから覚めた魔力をしっかりと込めていく。そして、 「――【アイシクル】!!」  詠唱を終えたノアは、ロイルが指さす方角に向け、ブレることなく真っ直ぐに【アイシクル】を解き放つ。 「――えっ」  と同時に、視界に映るもの全てが氷漬けとなる。  ノアの【アイシクル】は、森の中に氷の道を作り上げてしまった。 「こ、これは一体……? わたしが知ってる【アイシクル】と、威力が全く違います……!!」 「そりゃそうだよ。だって今、ノアは十マナ全て使ったんだから」 「十マナ……!? それって、まさかわたしが【アイシクル】に使ったマナですか?」  氷柱魔法の【アイシクル】を発動する為に必要な魔力は五マナだ。しかしこれは、あくまでも必要最低限の魔力を指している。  五マナ以上、つまりは十マナを一度に込めることも不可能ではない。  魔力ゼロの日々が続いていたノアにとって、使用する魔力量を意識することはまだまだ難しく、思い切って【アイシクル】を放った結果、十マナを注ぎ込んでしまったということだ。 「さあ、滑らないように気を付けて」  ロイルが、手を差し出す。氷の道を進むつもりなのだろう。  白く染まったロイルの目によると、この道の先には十二体のゴブリンがいたはずだ。 「は、はい……」  滑って転ばないようにギュッと手を握ったまま、ノアはロイルと共に氷の道の先へと進む。そして見た。 「う、うそ……!!」  ロイルの【魔眼】が示す通り、そこには十二体のゴブリンがいた。  そしてその全てが、ノアが撃った【アイシクル】の餌食となり、氷漬けとなっていた。
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