【3話】魔力ゼロと伝えた途端、態度が一変しました

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【3話】魔力ゼロと伝えた途端、態度が一変しました

 ノアをパーティーに誘ったのは、ボドとエリーザの二人だ。  ボドは斧使いの前衛職で、エリーザは攻撃魔法を得意とする後衛職だ。  二人に連れられて来たのは、ギルドの談話室である。 「――で、お前はどんなスキルを持ってんだ」 「わ、わたしは【ファイヤーボール】と【ヒール】を覚えています」 「ほう? 攻撃と回復どっちもイケんのか。ってことは、エリーザよりも役に立つかもしんねえな?」 「ふん、馬鹿にしないでちょうだい。私は攻撃魔法専門なのよ? どっち付かずと比べてほしくないわね」  スキルとは、己が持つ魔力を代償とし、発動可能な能力のことである。  ノアは魔力ゼロだが、スキルを持っていないわけではない。スキルを習得する為、専用の書物に目を通し、魔物狩りに連れて行ってもらうことで、自然と覚えたのだ。  スキルを覚えたということは、扱う為の魔力を増やすことも出来るはず。  現状、スキルを発動することは出来ないが、魔力さえ増えれば扱うことが可能となる。  そしてスキルを習得出来たからこそ、ノアは諦めることが出来なかった。 「んじゃ、お前の実力見るのも兼ねて、こいつを狩りに行ってみるか」  そう言って、ボドはクエストの依頼書をテーブルの上に置く。  依頼内容は、王都の地下水路に潜むポイズンマウスの討伐だ。 「……あ、いつでも挑戦していいクエストもあるんですね」  依頼書をよく見ると、このクエストは常に募集しているものであり、討伐数に上限はない。  倒せば倒すほど、報酬を得ることが出来るのだ。  ノアが目を通したクエスト掲示板には貼られていなかったが、この手のクエスト専用の掲示板もある。 「まあ、最初だからな。ノルマ十匹ってところか」 「十匹も……」  マウスというからには、標的は小さく討伐もし難いだろう。  単独での魔物狩りの経験は、まだない。自分に出来るだろうかとノアは不安になる。 「ってか、ひょっとして得物もまだ持ってねえのか?」 「すみません……」 「ボド、魔法を使えない貴方には分からないかもしれないけれど、魔法使いは得物なんて必要ないのよ」  ボドの問いかけに、エリーザが口を挟む。  ノアが【ファイヤーボール】を習得していると知ったので、それを用いて戦うのだと思ったのだろう。  だが、ノアはスキルを発動出来ない。  何故なら、魔力がゼロだからだ。 「あの、そのことなんですが……実はわたし、魔力が……ゼロなんです」  二人に迷惑を掛けない為にも、魔物狩りに出る前に伝えておかなくてはならない。  意を決し、ノアは己の秘密を打ち明ける。すると、 「……は? なんだそのクソみてえな冗談は」  ボドの声色と表情、そして態度が一変した。
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