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11.最低
「あれから雨を見ると、上がらなければいいと思うようになってしまった」
そう呟きつつ、スバルは目を伏せる。
まったくおかしなものだ。ここは地球から永遠と変わらないほど遠く離れた場所なのに、そんな遠くに来ても自分はまだ忘れていない。
雨の匂いを辿ってしまう。
「だからスバルは宇宙を目指したの?」
問われてふっと目を上げると、リオンは眉を寄せてこちらを見下ろしていた。
「雨が降らないから、ここに来たの? 降らなければ雨は止むこともない。だから」
「さすがにそんなことは……」
言いかけてスバルは額を押さえる。
ああ、もしかしたらそうかもしれない。あれから……他の誰かを好きになることはなかったのだから。
雨を見る度に思い出してしまっていたのだから。
「もしかしたら、そうかもしれないね」
淡く笑ってみせると、リオンはますます難しい顔をしてから、はっと短く息を吐いた。
「言ってはなんだけれど、最低だね」
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