14.日向

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14.日向

 ギャップ萌え。  目を瞬くと、ふふ、とリオンが笑ってこちらを覗き込んでくる。翠色の彼の目は深くて、遠く離れた故郷のポプラの緑を思い出させた。 「俺は、雨上がりが好きだ」  ざわり、と翠が揺れる。聞こえるはずのない風の音が耳を掠めた。 「だから今、上がってくれて、ほっとしている」  頬にリオンの指が触れる。そうされて溢れていたはずの涙が消えていることにスバルも気づいた。 「この雨はさ、必要なんだよ。ちゃんと心を潤わせるためには。そうしないと表面が乾いてひび割れてしまう。でも……多すぎる雨は心を腐らせる。君はもう充分、雨と向き合ったよ。悪いけど、その雨とはお別れして日向を俺と歩いてくれ」  抱え込まれた頭に、柔らかい掌がぽんぽんと落ちてくる。  その手の温もりに押され、自分の中からまた雨が降り出しそうな気がした。 「ここには日向なんてないよ」  そう言ってしまったのは、胸の奥にしんと落ちてきた、彼と歩く時間もきっとそれほど残されていない、という確信ゆえだった。それはリオンだって同じなのだろう。なのに、彼の声からは温もりは消えなかった。 「見て」  不意にリオンが窓の向こうを指さす。うっすらとした白く淡い光によって、岩だらけの大地が見て取れた。 「ここも太陽系タイプの惑星系だ。恒星の光も届いている。俺にはあの光は俺たちに生きろと言っているように思える」  だから、と言ったリオンの手に力籠もる。 「俺と生きてくれ。泣いてもいい。絶対また泣き止ませるから。だから一緒に太陽を見てくれ」  なんてプロポーズのような言葉だろう。  こんなことにならなかったら、彼は言わなかったに違いない。  それでも言ったのは、押さえきれなくなった恋ゆえか。アダムとイブよろしく世界にふたりだけだからこその懇願なのか。  どちらでもいい。  リオンの体に腕を回すと、肩を包む腕の力が強くなった。  この人となら雨上がりも痛くない気がした。  淡い光が差し込んでくる。それは、あの日、先輩と見た陽光よりも眩しくスバルを照らした。  
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