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3.水
惑星探査にはトラブルはつきものだ。ここは地球上ではない。想定外のことは起こって当然だ。ゆえに未曽有の出来事に備え、スバルたちクルーはあらゆる訓練を積んではきている。
いるが、ワームホールによる高速時点移動さえ成し遂げたシャトルが、出現ポイントのほんのわずかなずれにより、小惑星に接触し、不時着せざるを得なくなるという事態には……さすがにお手上げだった。
ただ、幸いにもこの星には氷があった。不時着時、水再生システムも故障し、復旧の目途も立っていなかった中で、エルラに氷が存在していたことは九死に一生を得たとクルー皆が信じても仕方ないことではあった。未知のものではあるが、検査した結果、人体に害はないことがわかり、全員の顔が明るくなった。
しかし、その水が……事態を変える。
水を口にしたとたん、ハンナが倒れた。次にアランが、それを追うようにダニエルが苦しみ出した。
彼らはそのまま、息を引き取った。
不思議なことに、同じ水を口にしたはずのスバルとリオンは無事だった。それどころか地球から持参し、シャトル内で栽培している野菜たちにもなんの影響もない。
自分達にはなんらかの抗体があったということなのか。それともじわじわと毒が浸透してやがては彼等と同じように死に至るのか。不安におびえながら暮らし始め、すでに六か月が経つ。
その間、地球との交信は途絶したままだ。
「最近さ、思い出して仕方ないんだ。地球のこと」
暗くなった空気を振り払うようにリオンが笑顔を向けてくる。彼に合わせそっとスバルも口角を上げた。
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